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2015年4月21日火曜日

近況

PCを起動するのがおっくうで久々の投稿。

 縁あって句会に参加するようになった。古本屋の100円コーナーで句集を見かけた時に買うことがあって何冊か本棚にある。それをかみさんが覚えていて、俳句に興味がある人がいたら紹介して欲しいと相談されて私に声がかかったのである。読むことはあっても詠むのは何年ぶりか。参加する前にお話しをいただいた方とお会いして、兼題と言って句に詠み込む季語が3題出されること、合計6句提出すること、当日ブラインドで選句して採点されることなど説明をいただいた。会場が学士会館という由緒ある場所で、美味しい食事(アンドお酒)付きである。何かと週末の予定が詰まること、参加費が少々お高いなど、毎月の参加は難しいけれど貴重な機会なので続けていきたい。


即興演奏のこと。

 高円寺グッドマンのレギュラー企画「イノスボクス」は依然継続中。特に上野の東京文化会館試聴室で開催される「近況」にイノスボクスで参加したのは刺激的だった。それとは別に、阿佐ヶ谷Yellow Visionのセッション「Groover's Jam」に参加。これは高円寺グッドマンと被ることがあって毎回とはいかないものの楽しみにしているセッションの一つ。さらにもう一つ、近藤直司氏(B.Sax,T.Sax奏者)主催のセッションにも参加した。ワークショップもいい感じに続いている。


即興演奏の絡みで。

 つい先日、「モジュラーシンセミーティング」というモジュラーシンセサイザーが主役のライブとトークのイベントを見に行った。ひとつひとつは機能が限られているモジュールを思い思いにケースに詰めてケーブルで結線するシンセサイザーで、ひとつのテーマで集まっているのに、出演者ごとに全く異なる個性的な音楽が聴ける。そのトークの中で、ノイズの垂れ流しや完全即興演奏のやりっぱなしを音楽と呼べるのか否かという、議論というか課題というかが持ち上がった。私個人としては「今さっきのところおもしれー!」というのがあれば音楽として成り立つと思う。そしてもうひとつ興味深い話になったのは、「時々放電する魚が住む水場にピックアップ沈めてただ録音したアルバムの良さ」「風鈴を研究してて心地良かった」という点。尺八の「竹林を吹き抜ける風の音を表現するのが目標」という話を直結する。この話は言い換えれば「人が居ようが居まいが存在する音楽」で、量子論の「観察すると確定する」話にもなる。お客さんがいなくて出演しているイベントも然り(泣ける)。

2014年12月29日月曜日

音楽の演奏との付き合い

大上段に構えたタイトルから振り下ろす

 12月27日、ウチダヨシノブさんが主催する「楽器を使わず♪ 音楽(おとあそび)表現ワークショップ」に参加した。リンク先に書かれている通り、楽器演奏の経験が無くても、楽器が無くても、音楽を楽しむことは出来るよ!という趣旨のワークショップである。まず最初に「音楽とは?」を各自思い思いに付箋に書いて壁に貼ることから始まって、ウォーミングアップからメインの「紙だけ使って音を出す」試みへと進む。ただ闇雲にガシャガシャやってては音楽の体を成さず、私が付箋に書いた「感情への働きかけ」が生まれない。そこでウチダさんがひとつリズムの約束を足す。それがきっかけに笑いが起きたりする。流石。
 私は今となっては楽器演奏の経験を持つ者である。今更リセットすることは出来ない。そんな私がこの手のワークショップに参加するにあたって最初に思い浮かぶのは「サバイバル」。私はアウトドアがからっきしダメなのだが、音楽だけは何とかしてみせるわ!この場合は私がやってみせるだけではなくて、やってみ?と巻き込むのが音楽の真価である。

 12月28日、高円寺マッチングモヲルにて「モジュラーシンセミーティングTokyo」を観に行った。飛び入り参加可能とあって私もセットを持って行くことも考えたが、この日はこの後にジャムセッションの参加を決めていたのでまたの機会にまわした。 モジュラーシンセサイザーというのは1つのモジュールは基本的に1つの機能しか持たず、そのモジュールを複数ケーブルで繋いでいって複雑な音を生み出す電子楽器。近年日本でもユーロラックという規格に則ったモジュールが手に入りやすくなって徐々に普及してきた。モジュラーシンセミーティングTokyoはそんなモジュラーシンセプレイヤーが一同に会して、ライブあり、トークありで楽しい時間があっという間に過ぎていった。内容もバラエティーに富んでいて、電子音響にダブステップのDJMIX、小林旭を熱唱という完全に予想外のパフォーマンスも!1月15日には高円寺ShowBoatで類似のイベントが開かれるそうなので、こちらも注目したい。http://showboat1993.wix.com/showboat1993#!20151/cufw
  上記のワークショップとは盛大に対極にあるようだが、モジュールの数や組み合わせが自由なのでたった3つの基本的なモジュールだけでもパフォーマンスが可能であって、お客さんを唸らせる。立脚している地点が同じなのだ。

 同日、阿佐ヶ谷YellowVisionにてジャムセッション「Groover's Jam」に参加。トランペット1本持って。多かれ少なかれ楽器の演奏に通じた面々の本気の戯れで、圧巻のライブである。ドラムとエレクトリックな楽器の音量に負けじと全身で音を吹き上げる。スケールに合わせられればもう少し文明的な音楽になったかもしれないが、そんな余裕は自ら消し飛ばして「音楽はなるようになるもの」を地で行った。とはいえ、各々得意なジャンルが厳然とあって、それに合わせたり、関係なしにぶっ込んだりのせめぎ合い。特にこの日のエスニックになったセッションに驚いた。クロマチックな楽器のプレイヤーがスケールに即対応していたのが凄い。かくいう私もフリーインプロヴィゼーションじゃ!とワルぶってみても、学生時代の基礎があってBachの標準的なトランペットなので、そう道を外した音にならない(道を外した音ってどんな音なのか)。
 つまり、カオスになり過ぎないところが音楽だった。カオスにしても音楽を感じられるものがあるけれど、それが出来る人間は限られてて、やってみるとむしろ難しい。

 仕事納め直後の2日間で濃密な経験をしたのだけれど、音楽演奏の門戸が広く開かれているのは間違いない。楽しめることが1つ増えるのが悪いことではないだろう。

2014年11月29日土曜日

いろいろな楽器、楽器のいろいろ

まずは長らく告知してきたライブのご報告を。

 先日のイノスボクスのライブではゲストに木下正道さんをお迎えして、2セット目の前半20分がセッションに。私はトランペットと KORG monotron + KORG KP mini、高円寺グッドマンマスターの鎌田さんはアルトサックス、木下さんはカセットMTRにコンパクトエフェクター多数というもので、面白い演奏になった。木下さんはこれを書いている前日に初台オペラシティ内の近江堂で開催された松平敬さん(バリトン)の無伴奏コンサートで、無伴奏独唱曲「石をつむII」が上演されて拍手喝采を浴びるなど高い評価を得ている作曲家。とても貴重なライブになったと嬉しい気持ちでいる。


無駄に楽器を所有している。

 オタクやマニアと言われるタイプは概してコレクター気質であることが多いと思っているのだが、少なくとも私は該当する。もともとシンセサイザーが好きだったので、就職を機に中古のシンセサイザーを買い漁ったのと、Roland のサウンドキャンパスでオリジナルのクラブミュージックを打ち込んだ。当時公開していたホームページでは PC と外部音源の MIDI と LINE の配線図を掲載していたが、すっかり PC 一台で完結するようになった今ではやや痛いホームページに見えるかもしれない。思い出してみると、YAMAHA SY99 を入力用の鍵盤にして Roland SD-70 という AUDIO IO 付き SC-8820 互換機に打ち込んでいた。
 シンセサイザーは「シンセサイザーからどれか1台」で終わらない。各メーカー各製品ごとにキャラクターが全く違うので増えていく事になる。それと様相が異なるのがトランペットや尺八といったアコースティック楽器。これらは「トランペットからどれか1本」で大概事足りる。理想的には曲調によって明るい音色の物と暗い音色の物を使い分けたいけれど、まあ1本持ってて何を演奏してもおかしくはない。私の場合はシルバーの Bach だが、一応、Kunstul 製でラッカーのフリューゲルホルンとマルカート(下倉楽器のショップブランド)製でラッカーのポケットトランペットもあって使い分けをしてみた事もある。しかし、もっぱら Bach 一本で対応している。尺八も同様で、理想的には古典の場合には中を地や漆で整形していない地無し管、あるいは一尺八寸より長い二尺以上の長管が欲しいところだが、それも必須というほどではない。こちらは習い始めから1年ほど使ったプラスチック製「悠」と一城銘の竹製がある。「悠」はまったく侮れなくて、真面目に尺八をやってみようかな?という方にお勧めしている。

 
演奏する曲について。

 シンセサイザーは歴史上新しい楽器だし、トランペットは古くからあるけれどどんな曲を演奏してもほとんど問題にされないが、尺八などの和楽器は古典的でないと「けしからん」という反応をする方が少なからずおられる(ソースは動画サイトのコメント)。トランペットなどの西洋楽器なら良いのに邦楽器ではダメな理由を考えてみると、様々なジャンルが演奏されて来た歴史の長さと日本人の気質の相乗効果だと思う。慶野由利子さんから「楽器なんだから何を演奏したって良い」というお話を聞いて私もその通りだと思っているのだが、私は「古典は古典らしく演奏する」と付け加えたい。ポップスや EDM を演奏したっておかしくないが、古典を今時のアーティキュレーションで演奏するのは間違いだと断言する。まあ、ポップスや EDM の側で古典のアーティキュレーションが迷惑になる事もあるだろうから、楽器の可否と言うよりは作曲者の意図・演奏者の意図の問題だろう。

2014年11月21日金曜日

初めての新宿PIT INN

毎度の告知です。明後日の日曜日なんです。

11月23日日曜日、20時より高円寺グッドマンにてイノスボクスのライブです。
今回はゲストに木下正道さんをお迎えします!

イノスボクス (鎌田雄一as 森下雄介tp,etc)guest木下正道(elc.)
/吉野繁as ソロ 2,200円(400円までのドリンク付き)

https://www.facebook.com/events/859956574057264/



最近Twitterで気になっていたblacksheepを観に行った。

仕事帰り、しつこい咳に悩まされつつも小雨降る中を新宿PIT INNへ向かった。PIT INNは歴史的なライブハウスで、ジャズプレイヤーはここで演奏するのがステータスになっている。客席は整然と椅子が並んでいて、テーブルには灰皿が置かれていた。高円寺のクラシック喫茶「ルネサンス」も各テーブルに灰皿が置かれていて今となっては少し驚きもある。もて囃されていた時代を私は実際に体験していないが、その時代の雰囲気を今に残していると思う。灰皿だけでなく吸い殻の模造品があったら面白いかもね。

blacksheep は SF とフリージャズの融合をテーマにしたバンドと知り、私も一応 SF が好きだしペット吹きなのでいっぺん観に行ってみようと思い立った。アルバムは3枚出ており、西島大介氏がイラストを描いていたり神林長平氏が帯を書いていたりと SF 度はかなり高い。曲の方も SF 作品から着想を得たというだけあって、フリーキーな演奏でもはっきり起承転結があるおかげでストーリー性があった。ピアノ・バリトンサックス・トランペット・チェロという編成はかなり変則的だけれど、さすが皆さん腕が確かである。

翻って私の演奏はフリーインプロ。フリージャズでもテーマはあって、中間でフリーインプロになってもフックになるリフが入ってテーマに戻ってくるものだが、私のは徹頭徹尾フリーインプロ。それを面白いと思ったのだからそれで今後も追求していきたい。



それにしても咳がしつこい。

職場でもあちこちから咳をするのが聞こえてくるし、毎日ギッチギチの電車に乗ってる間にも聞こえてくる。加湿器を使い始めたものの少し遅かったかもしれない。のどに良い食べ物として、大根を細かく切ってはちみつに漬け、しみ出てくる水分でゆるくなったはちみつをいただくのが良いとのこと。明日にでもやってみようと思う。

2013年9月15日日曜日

告知など

有り難いことに、人前で音を出す機会が増えております。

このブログの右に告知スペースを作って貼った通り、高円寺グッドマンのマスターが声をかけて下さって始まったデュオに最近「イノスボクス」と名付けて活動中。毎月1回、土日のどちらかで高円寺グッドマンで出演している。次回は次の通り。

10月6日(土)20時開演
2,200円(400円までのドリンク付き)
イノスボクス
冨田秀康g 照内央晴p デュオ

そして、11月に六本木Super Deluxeに出演が決定。こちらはなんと高円寺グッドマン以外では滅多に見られないキュノポリス(犬狼都市)との共演となっている。イノスボクスで組んでいる鎌田さんはキュノポリスのメンバーでもあり、キュノポリス+私と言えてしまうが、そこは大人の対応でどうかひとつ。そして、平日。出来れば有給休暇を取得したい。

11月7日(木)開演時刻未定
riunione dell'uccello #1 鳥の会議


私個人では、詳細未定なれど9月21日(土)に吉祥寺Fourth Floorのイベント「長月の今豚(Kong-Tong)」に声をかけて頂いたのと、あと阿佐ヶ谷Yellow Visionのフリーセッションに参加するつもりでいる。

かつては目黒Jammin'(最寄り都立大学駅)のセッションにも出ていたものの、やや遠くて日曜の夜というのがネックになっててご無沙汰中。即興演奏ワークショップ「ピアノアピ」(当時『2pf』)でご一緒したジャズピアニストの鶴巻有希子さんをお誘いしたことがあって嬉しいひとときだった。昨年出産なされたということもあり長らくお会いしていなかったのだが、今ブログを見たら10月にライブがある模様。足を運びたい。

あと、このブログでは事後報告になってしまったものの、高円寺マッチングモヲルでは電子音楽でライブに参加した。上記のライブでも自作の電子楽器やPCでプログラミングしたりしたりしているが、そういう電子音響オンリーで出たのは本当に久しぶりで、小さなテーブル1つのスペース縛りが功を奏して好評を頂いた。

そんなこんなでどうぞよろしくお願い致します。


2013年4月11日木曜日

かわいいプログラミングの組み合わせ

Twitterのbotを作った。

骨筋飛蝗ボット
https://twitter.com/YeeMyu_bot

time signal というのは時報のこと。ご覧の通り、毎時00分になるとwavファイルへのリンクを投稿するので、音が聴けるようになっている。鐘の音とは程遠い音だけれども。

今時botを作ろうと思ったらネット上でブラウザから必要事項を書き込むだけで高機能なbotが作れてしまうものだが、それらのbotがツイートするのは大抵定型文である。とはいえバカにできない代物で、TLに現れた語句に反応して返すといったことも出来るらしい。

実はbotを作るのは今回が初めてでなく、時分が回文の並びになるとツイートするというbotを作って動かしたことがある。例えば12時21分とか、23時32分とか。その時も今回も使用したのはPythonというプログラミング言語から利用出来るpython-twitterである。

python-twitter
http://code.google.com/p/python-twitter/

これを使えばほんの数行だけコードを書くだけでプログラムからTwitterに投稿が出来たり、TLやフォロワーなどを取得出来る。ほんの数行だけで……ほら、かわいい気がしないか?

……しないと思うけれども、せっかくなので。ともかく、これで簡単に自動的にツイートする仕組みは出来る。それだけで作ったのが前回の回文時刻だ。しかし、今回はPythonを柱にして、ChucKという音声用のプログラミング言語を呼び出して音声ファイルを作らせて、そのファイルをホームページ用のサーバーにFTP転送、それから前述の通りURLをツイートするという事を考えた。このうち、未経験なのはFTP転送の部分。これについてはPythonがインストールされていれば何も追加しなくても機能が使えるようになっていて、マニュアルを読んですぐに実装できた。音声ファイル作成のプログラムを呼び出して、FTP転送して、Twitterにツイートするまで20行ほどしか書かなかった。ほら、やっぱりかわいい。

最後に専門的なことを。
上記のpython-twitterだが、私の環境Debian Linux 6で上記のリンク先に書かれている手順で書かれている通りにならなかった。まずDownloadにあるtarファイルからのインストールでは、インストールは出来たっぽいがTestingで派手にエラーになる。それもそのはずで、存在することになっている「testdata」というディレクトリが存在しないから。
次にリポジトリからソースを直接取得する方法では、インストールがスタート直後にエラーで止まる。これは「README.md」というファイルが無いから。見ると「README」というファイルはあるので、コピーしてファイル名に「.md」を付け足して通した。Testingは一部エラーになる。その原因は、今度は「testdata」というディレクトリはあるものの、中のファイルが一部足りないからである。付き合ってられんのでそのままにした。今回の用途ではまったく影響なし。

肝心の音声についてなどまだまだ書けることはあるがここまでにしたい。以下、なりふり構わずAmazonアソシエイトのリンク。私が実際に購入したことがあり、今回の記事と関係がある本を挙げる。いわゆる動物本ばかり……

     

2013年2月16日土曜日

トランペットの練習のこと

 2月11日(月・祝)に、日本トランペット協会が主催するアンサンブルコンサート&フォーラムに参加して来た。第一部はトランペット・アンサンブルのグループがクラシックを演奏するコンサートで、第二部は日本トランペット協会の理事を務める先生方をパネリストに、観客の質問に答えていただけるというもの。テーマは「とっておきの上達の方法」。かれこれ20年も頭打ちが続いている私にとって願っても無いテーマにして、船頭多くないか?という一抹の不安を頭にこびりつかせて出かけた次第である。

 結果から言えば、参加して良かった。と同時に、不安が的中する場面もあった。「ロングトーンで音を整える」「リップスラーで鍛える」「タンギングの練習をする」といった大きな括りは間違いないが、もうひと押しになる微妙なところにギャップがある。それはもうトランペットに限らず主に管楽器の練習につきまとう宿命で、インターネットや本など他のメディアにしても最終的には「自分に合った奏法を見つけましょう」がキメ台詞である。傾向としては「こうしましょう」というアドバイスより「こうしてはいけない」というアドバイスの方が統一されているような気がする。

 私から言える事といったら、まず悪いところに気がつく必要があって、次にそれを放置しない事。活字にすると当たり前すぎて赤面ものだけれど、どうだろう。私の場合、教則本に載っている32小節ほどの練習曲は吹けているつもりだったのだが、実は楽器をかまえて最初の1音をかなりの確率でパスッと外す。いかんいかん、と思ってそのまま続きを吹きつづけるか、すぐに吹き直す。すると、直っている。ところが本番はそうはいかない。わざと時間を置いて1音を出す練習が要るのである。私は尺八も習っているのだが、トランペットで放置していた部分が尺八にも出て最初の1音を外すので、先生から「一度口から離して、それから吹き始める練習を」と言われている。悪い点を放置するのは、それがちょっとした事でも怖いことなのだ。

2012年5月16日水曜日

楽器考

5月11日金曜日、U::Gen Laboratrium に行った時のこと
ここのところ仕事が不安感を漂わせつつも落ち着いているおかげで、退社後に大崎まで行って l-e で開かれるライブに行った。というのも、方法マシン時代に交流があった吉原太郎氏と、同じころにアクースモニウム(2個より多いスピーカーを配置する音響作品)を通じて知り合った由雄正恒氏が出演すると知り、これは良い機会といそいそと出かけたのである。
冒頭でリンクしている通り、U::Gen Laboratrium は大谷安宏氏が主催しているイベントとある。私は U::Gen という語からコンピューターで音声を合成するプログラミング言語を連想するのだが、実際は当たらずとも遠からずといった内容で、そんな事より私が仕事の都合で東京に出て来たばかりの頃によく耳にした音楽を多く聴くことが出来て、「そういえば俺、こういう音楽好きなんだった。」と思い出させてくれた。

好きなのを思い出した音楽とは
当時の私は「エレクトロニカ」という大きな括りで聴いていたが、少し詳しくなると「チルアウト」「電子音響」、そして「ミュージック・コンクレート」という語を知るのはもっと後の事である。日常的に聞こえてくる音を録音して素材とし、他の音と重ねたり再生速度を変えるなどの変調を施して、音響で心象風景を描く。とかく人工的な「長調だから明るい/短調だから暗い」曲調とは違う、音から受ける印象にじんわりと沈み込んでいく感じがする。
そんな中、主催の大谷安宏氏が演奏したのは IRCAM が開発したリード楽器の物理モデリング音源を、ボタンが多数配置されたパッドでリアルタイムに演奏するというものだった。これは一転して楽器による即興演奏と言える。Mac でパラメータを処理して音を合成しているので電子音なのだが、その発音原理はあくまでもサックスなどのシングルリードの木管楽器に準じている。見てると必死にボタンを操作しているのだが、音が出たり出なかったり、出たと思ったら耳障りなミスリードの音だったりと、恐らくやってる方も予測不可能なのだろうという展開だった。

それらを通してひとつスッキリしたこと
くどいようだが、私はひとつの事に長く集中して取り組むことが出来ずに、楽器ひとつ取っても電子楽器とアコースティック楽器を行ったり来たりしている。そこには自然にアコースティックかエレクトリックかという分類がついて回る。しかし、エレクトリック楽器においても精神的にはアコースティック楽器として接しているものがある。エレキギターのような弦楽器は元より、シンセサイザーの中でもアナログシンセサイザーや、より生楽器に近いオンド・マルトノという電子楽器も存在する。そのポジションの落としどころが定まらず、楽器が好きな友人知人で集まるといつしか堂々巡りに陥る話題の一つになっていた。
それが今回のライブイベントで、ミュージック・コンクレートと物理モデリング音源の演奏を聴いて、「一度空気を振るわせた事のある音を加工して出す楽器(機材)」と、「発振器から出た振動を加工してから初めて音を出す楽器(機材)」という分け方が出来る事に気がついた。前者はテープレコーダーやサンプラー、PCM音源によるシンセサイザーもこれにあたる。なお、蓄音機なら電気を使わない。後者が問題で、アコースティック楽器にエレキギター、アナログシンセサイザー、オンド・マルトノ、それに PC を使用した DSP も同じ括りに出来るのが大きな意識の変化になった。特に私の場合、シンセサイザーと一口に言えども、アナログの力強い音も、PCM 音源でガムランの音や弦楽器の音を簡単に重ねたり切り替えたりして使えるのも、両方とも魅力を感じている。いざ音を鳴らし始めると割と何も考えてなかったりするけど。

どうせならもうひとつスッキリしたい
「一度空気を振るわせた事のある音を加工して出す楽器(機材)」と書いた方、こちらは端的には「サンプリング」と一言で言い表す事が出来る。一方、「発振器から出た振動を加工してから初めて音を出す楽器(機材)」というのはアコースティック楽器を含むからには「オシレーター」と言うのも無粋で、一言でうまく言い表せない。そこで、どうせ自己満足なんだから言葉も作ってしまえと、録音した音を鳴らす方を「カリフラ楽器」、物体を振動させたりする方を「ブロッコ楽器」と言うことにした。そして、PC のように両方に使えるものは「アブラナ楽器」。私がニコニコと楽器の話をしている間、頭の中ではそういう語で表現していると見て間違いないのであしからず。

追記
「ブロッコ楽器」と「カリフラ楽器」の両方を受け持つ楽器を「アブラナ楽器」としていたが、「ロマネス楽器」に改める。ロマネスコという野菜があるのを知らず、調べてみたらドンピシャで驚いた次第。

2012年5月4日金曜日

poor man's DTM environment

このゴールデンウィーク中にテクノを2曲アップ。

deskwork
http://soundcloud.com/yeemyu/deskwork
train trip in the rain
http://soundcloud.com/yeemyu/train-trip-in-the-rain

作成には、Milkytracker というアプリケーションを使用した。MODというファイル形式のうちの1つ、XMファイルでの作成である。

http://homepage2.nifty.com/moriyu/files/deskwork.xm.zip
http://homepage2.nifty.com/moriyu/files/ttrain.xm.zip

歴史のお時間です。
どうした風の吹き回しか、と思われる方がおられるかどうか。今でこそ即興演奏がメインだが元々はテクノが好きで、KORG N1というピアノ鍵盤のシンセサイザーのGMフォーマットで曲を作ってはテクノ専門のMIDIファイル投稿サイトに投稿して、のちに.logというホームページを作って自前で公開するようになった経緯がある。時は20世紀の終盤、テレホーダイからADSLが主流になってインターネットが急成長する頃で、光回線が普及し出す前夜といったところになる。
通信速度の観点からすると、ADSLやケーブルテレビの回線を引いた家庭では今の携帯電話あるいは公衆無線LANと良い勝負、そうでなければ携帯電話より劣る通信速度でインターネットを利用していた事になる。そこへ持ってきて、パソコンに音楽を録音したそのままのファイルは非常に大きく、そのまま送ったら1分の曲に1時間かかるのではというもの。そこで、パソコン通信時代から音楽を共有する手段の一つにMIDIファイルがあった。音が出るハードウエアを各自持っている必要があるものの、そのハードから再生するのに必要な信号(ドを鳴らせ、音色を10番に変えろ、など)だけのデータなので、当時主流だった圧縮形式LZHに圧縮すると数KBで1曲フルで送ることが出来た。なお、この頃に坂本龍一氏はMIDIピアノを使ってMIDI信号のリアルタイム送信を行い、各家庭のMIDIピアノにコンサートの演奏を届ける実験的なコンサートを実施している。
つまり、音楽を共有するにあたっては今とは比べ物にならないほどファイルサイズと機器のコストに神経を尖らせていた。高価な外付け音源がなくてもMIDIファイルを再生出来るソフトウエア音源が生まれたのも、MP3という圧縮形式が生まれたのも同時期。特に前者はその後VSTインストルメントといったソフトウエアシンセサイザーへ進化を遂げる。

ようやく本題です。
さて、音色の配列や命令に互換性が問われる外付け音源向けの音楽ファイルのやりとりとは別に、パソコンの内蔵音源に演奏させる形式が存在した。古くはPSG音源、少し進んでFM音源、もう少し進むとPCM音源がプラスされる。ここで問題になるのが最後のPCM音源である。この形式は録音した音をそのまま再生する為のもので、例えばピアノであればドの音を「ポン」と出したものを録音しておいて、音程を変化させたり、その中間部をループさせたりすることで擬似的にピアノの音源とすることが出来た。要するに、どんな楽器であれ特徴的な部分だけ録音しておいて後はパソコンの方で処理するので、これも非常に小さいファイルサイズで1曲丸々再現可能になった。外付けの音源が不要になり、互換性も気にしないで済むようになったのである。
このパソコン内蔵のPCM音源をフル活用したのが、Amigaに端を発するMODというファイル形式。Demosceneという、どれだけ小さいプログラムサイズで度肝を抜く映像作品を作るか競う文化が海外にあり、そこからスピンアウトした技術という認識でいる。この形式で音楽を作成するツールが無料で公開され、音の素材も外から手に入れたり自力で録音したりすることで、元手をかけずにかなりのクオリティーで楽曲の作成から公開が出来るのである。ただし、五線譜で曲を打ち込みたいとか、エフェクターを使用したいといったユーザーフレンドリーな要求は一切受け付けない仕様なので、どちらかと言えばプログラマー向けのツールと言える。
私がMODを初めて知ったのはかれこれ10年ほど昔。音楽が光回線その他でMP3やストリーミングでバンバン飛んでくる世になって存在意義を失いつつある形式なので、当時お世話になったサイトが今でも残ってるか不安だったが、あった。

波平会
http://www.mars.dti.ne.jp/~odaki/mod/index.html

今こそ「NHKにようこそ!」である(否)。PCの環境が様変わりしていても、MODについての記述は今でも十分通用する。私のメイン環境はLinuxで、作成に Milkytracker、聴くには Open Cubic Player を使用している。Windows、Mac、スマホでも再生できるアプリが存在する。今でも細々とではあるものの続く音楽の軽量なファイル形式で、昔とった杵柄よろしくテクノな曲を打ち込んでみた訳である。

The MOD Archive
http://modarchive.org/

2012年4月28日土曜日

擬法第一番 道路交通情報

4月21日土曜日、しばてつさん主催の「近況vol.38」に出演した。
http://www4.plala.or.jp/soodemonai/kinkyo/kinkyo.html

この日に向けての準備は4月1日から始めていた。婚姻届を書いて役所に持って行った、その日である。丸一日ほぼカンヅメになる準備作業は1回で済むと思っていたものの、1日の1回目を失敗(のちに失敗ではなく早とちりと判明)し、翌週の2回目は風邪で寝込んで失敗、本番1週間前のラストチャンスでようやく成功という、なんとも心もとない進捗をたどった。
なお、2週目に風邪で寝込んだと書いたけれども、1週間かかってなんとか回復。ピアノの演奏についてもピアノを置いているスタジオを借りて指を慣らした。人事は尽くした訳で、後は天命を待つばかりである。そして当日の朝、起床時に布団から上半身を起こし、携帯電話をとろうと右に身体をひねった体勢で出た一発のクシャミで、背中の右半分に激痛が走った。昔、肺気胸で痛くなったところとまったく同じ箇所。それが天命だった。

思い過ごしですた。
「今度は救急車を呼んで下さいね!」と怒られた肺気胸の再発かと思い、もはや起きることも寝る事も、深呼吸も痛くて出来ずに頭の中が沸騰した。まだ気胸と決まった訳ではなく、もしまた肺に穴が開いたのだとしても、小さければ2〜3日はもつという。とにかくコンサートには出たい。痛みを我慢してじわじわと仰向けに寝ると、1時間様子を見ると決めた。1時間で痛みがひいてくれば出る、そうでなければ #7119 に電話。その結果、1時間で立てるくらいには痛みがひいてくれたのである。

そして今では。
本番は痛いなりにも問題なく演奏ができた。結婚を祝っていただく光栄に浴すことも出来て、さらには浅草にあるオンドマルトノカフェにまで行って、大変有意義な時間を過ごす事が出来た。右の背中から脇腹にかけての痛みは、医者に診せていないけれども、どうやら肋間神経痛らしい。いまでもまだしこりのように痛みがある。それより今問題になっているのが、朝起きたら顎が痛くて奥歯が全く噛み合ない状態になった事である。食事がまともに出来ず、たまらず歯科医院で診てもらった。埋まったままの親不知が影響しているとの診断だった。それ以来、うどんかお粥を食べる日々が続いている。

2011年3月20日日曜日

祈願

東北地方太平洋沖地震により亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げますと共に、被害を受けられた皆さまとご家族にお見舞い申し上げます。

3月11日の地震があった時、仕事中だった。
現在の職場は港区にあり、相変わらずのデスクワーク。緊急度が高い仕事をひとつ抱えていて PC に向かっていたところ、横揺れが始まった。だんだん強くなるのではなく、弱から強に切り換えたように揺れた。窓にかかるブラインドが大きく揺れて、それがガチャガチャとぶつかる音が一番大きかった。大きな揺れは2回あり、その間にビルのアナウンスでエレベータを停止したことが告げられたが、外に避難することはなかった。その外を見ると、お台場の方で黒煙があがるのが見えた。そのまま視線を移すと、旅客機は何事もないかのように空を飛んでいる。仕事に戻ろうと努めるが、とても手につかなかった。一方で、プロジェクトの維持と統括を担う方々が買出しに出かけて、帰宅できない方々を主な対象にパンやバナナ、お菓子が空いてる席に置かれた。帰宅を考えた時、Google Map で調べたところ幸いにも14kmほどだったので徒歩で帰ることにして、19時30分ごろ退社、休憩をはさみつつ5時間で帰宅した。そして、本棚はそのままで、上に載せていた物や中の本が散乱している様を目の当たりにした。割れた物がなかったのは幸いだった。

週明け、職場との往復。
月曜日の出勤では、JR は初めから切り捨てた。11日の対応が、終日見合わせにして駅ではシャッターを下ろして完全にシャットアウトというありさまだったので、丸ノ内線(東京メトロ)・大江戸線(都営地下鉄)・京急線(京急電鉄)の乗り継ぎとなった。帰りは山手線(JR)に乗ったが大変な混雑で、渋谷駅でバスに乗り換えた。火曜日以降は計画停電の実施と節電から本数が減少したものの、通常通りのルートで往復できるようになった。仕事では交通事情を鑑みて、平常であれば16時、遅くとも18時には全員退社という対応が採られた。お客様の規模が大きく、システムを止めると全国にある支社・支店の業務に支障が出ることから、あくまでも安全を優先した上で、可能な限り出社するというスタンスである。ツイッターでも「自粛より経済を回そう」というつぶやきが増えてきたころで、早く帰りたいという欲求と、頑張れるんだから頑張るという意地と、相半ばした。

好きな事をやれるから、やる。
節電しないと詰み、という状況の中で、楽器が好きな私は Tp. を引っ張り出した。プラクティスミュートかヤマハ サイレントブラスを使えば迷惑にならないので、音を出していた。その間もラジオは点けっぱなし、インターネットではツイッターと USTREAM の中継は立ち上げていた。ラジオについては全て電池駆動の単体機で、同居人がラジオ番組のファンであることと、私がラジオのファンであることから、互いに1つずつプラス据え置きで1つという盤石の態勢である。その音でごまかすようにして楽器を鳴らす。そうしてないと落ちつけなかった。
そうしたところ、19日にチャージフリー、誰でも参加できるライブイベントがあることを知った。過去に何度か行った事があり、そのうちの何度かは自ら演奏もしたことがあるお店。以前デュオをお願いしたこともあるKO.DO.NA氏が出演するとあり、持てる限りの楽器を持って行った。演奏というかパフォーマンスで自分の無事を噛み締め、被災地の復興を祈願した。

2011年2月26日土曜日

噪音

昨晩、新高円寺駅の近くにあるバー「JUKEBOX」での事から。
蚕糸の森公園へトランペットと尺八の練習をしに行く途中にあり、「黒人音楽酒場」と書かれた看板と入口付近に並べて貼られたソウルシンガーのポスターが気になっていた店で、その厳つさから敬遠していたのだがようやく入ってみた。店内の壁はサイン入りの写真やレコードジャケットだらけで、かかっていた音楽はソウル。客は私一人である。ソウルはあまり聴かないのだが嫌いというわけではなく、I.W.ハーパーのロックを傾けながら普通に聴いていた。ポツポツとマスターとおしゃべりするなかでトランペットを練習していることを話すと、ソウルからジャズに変えてくれた。Miles Davis/Kind Of Blue のレコード盤。CD ではなくレコード盤だったことで、大変に沁みた。

そこで、レコード盤で再生する場面を思った。
私にとってまず馴染みがあるのはクラブミュージックの DJ である。この場合は CD にない音圧や音響特性が取り沙汰される事もあるが、主には曲と曲を繋ぐ時のピッチ補正や、スクラッチなどによる積極的な音作りなど、レコードとレコードプレイヤーによる機械としての側面がクローズアップされる。CD プレイヤーが発売されるようになってすぐにはこういった用途に使えなかったが、パイオニアから CDJ シリーズが発売されると徐々に移行していき、今では USB メモリや SD メモリを直に挿せるミキサーや PC に繋ぐコントローラーが充実して機械でなくなった。音がクリアで持ち運びが簡単、操作性に遜色が無いどころかテンポ検出は元より波形表示など、そのメリットは大きい。音量は大きく、クリアに。ノイジーな音楽を再生した場合、記録されているノイズをクリアに再生するのである。レコード盤である必要性が低くなって来た分野である。
もうひとつの場面は、コレクションである。今でこそ CD や iTunes などのオンラインで再発が相次いでいるが、作品が作られたその当時にレコードを購入して今でも大事に聴くというもの。老舗のクラシック喫茶やジャズ喫茶で聴かせてくれるものがこれにあたる。ここでも例えば PC に取り込んでプレイリストに並べて再生ボタン一発でそれこそ24時間盤の交換要らずという使い方も想定できるが、それは手間だし、何より無粋という意識が働くかもしれない。既にある物を、あるがままに長年聴かせて来たのがレコード盤となる。音量は控えめ、レコード盤ならではのノイズが乗る。

タイトルの「噪音」は、「騒音」ではない。
冒頭の黒人音楽酒場での話に戻るのだが、しっとりしたジャズにレコード盤のノイズが乗ると雰囲気が大きく広がる。以前何かで読んだ本でレコードのノイズを雨音に例えていたが、正にそんな感じ。こういった効果的なノイズを「噪音」と呼んで良いのかもしれないと思った。Wikipedia の「倍音」の項目に説明があるのだが、和楽器などの民族楽器で重要視される音である。音楽的に効果のあるノイズ、心地の良いノイズとでも言ったら良いか。再発される過去の名曲、プレイヤーが目の前で演奏しているかのようなみずみずしさで聴かせてくれるのもいいけど、レコード盤に針を乗せて聴くのも良いものだ。

2011年2月20日日曜日

近況

前回の投稿から1ヶ月がとうに過ぎて、かけあしで振り返る。

音楽の複数次元 ジョン・ケージ『ヴァリエーションズVII』
1月29日と30日に行われたコンサートで、世界中の音をリアルタイムに収集・選択・ミックスして聴かせる作品が上演された。事前に出演者から「音」を募集するメールを頂いていたので、29日は会場で鑑賞、30日の日曜日に提供者として参加した。ここで言う音の提供とは USTREAM を使った音の送信で、私は東京競馬場へと出かけた。賭け事はしない質で競馬場に行く事自体が初めての事なのだが、独特の雰囲気が伝わればいいなと。
会場では中心にステージというか作業スペースが据えられ、コイルや水槽、ジューサーに扇風機といった物で雑然としたところを演奏者が思い思いに行き来する。観客はそのまわりを自由に歩き回れたのだが、私は遅れそうになって走って到着したので疲れていたこともあり、座布団にドッカと座って定点観測と決め込んだ。すると、スピーカーの方が目の前に近づけられて、時折爆音を聴くことに。
この作品の肝は、いかに音を集めるか、および、どのようにミックスするかにかかっている。後で知ったのだが、ステージ上に置かれた家電は出来る限り作曲された当時の1960年代の物が集められたそう。それらを使って目の前で行われている行為と直結した音が聞こえたり、聞こえなかったり、目の前にスピーカーが来た時にかすかに鳴っていた音が、テレビやラジオの音なのか、誰かが USTREAM で送ってきた音なのか、そういった事が漠然としたまま身を任せる感覚。SF やファンタジー、オーディオマニアの評論だったら身体感覚が拡散して世界と一体になるところだが、街の雑踏とも違う音の洪水で、ただただ面白かった。最後に付け加えると、競馬場から送った音がいつ拾われてどんな音量で再生されるのかは分からなかったのだが、後で聞いたところによると、ファンファーレが鳴り響いたそうである。してやったり。

プロジェクト5 研究シンポジウム・シリーズ vol.3《方法論としての音楽》
これは近頃特に気になっていた事で、作曲者が一音一音指定するのではなく、ほとんどの事を演奏者に任せる類の図形楽譜についての話と、その延長線上で音楽と言いつつ音として認識できない作品が生まれて、それとどう向かい合ったら良いか、パフォーマンス付きでお話が聞ける機会となった。向き合い方についてはだんだん折り合いがつけられるようになって来たのだが、作曲者が出音について興味がない(ニュアンスは『積極的に関わらない』)という話はショックだった。方法マシンに参加していながら何言ってるのか、と思われるだろうが、割合で言えば楽器の指定がある音楽らしい作品の方が多かったように思う。シンポジウムのパフォーマンスも「音楽の臨界点とその外部」との文言にほぼ偽りなく、ギリギリのところを感じた。それで結局未だに「音と関係ない音楽」にモヤモヤしているのだが、それはやはり私が楽器が好きという嗜好から来るしりごみだと思っている。ただし、その嗜好を掘り下げると銃器マニアや機械式カメラマニアだった時期もあり、何というか、カチャカチャと手を動かして結果が出る物が好きで、楽器にこだわらなくなる日が来るかも知れず、その時に自分は何をやろうとするのかが気になる。

あと、昨晩に即興演奏の録音をした。
http://soundcloud.com/yeemyu/20110219-1

その前日に江古田のフライングティーポットで、飛び入りでセッションに参加させて頂いてシンセ(エレピがメインで SawWave も少々)で音を出したのだが、やはり楽しい!

2010年12月25日土曜日

デュオ

12月20日、高円寺グッドマンの「なんでもいっぱいDay」に出演できた。
当日の夕方にマスターへ電話したところ7時半に来るよう言われて、予定通り仕事帰りに直行。少し遅れるかと思ったが、快速を使ったという事もあって時間通り到着した。すでに先客がいらしたのだが、その中に都立大ジャミンのフリーセッションでご一緒したトランペッターの横山氏が!8時が迫ると出演者が集まって来て、今回デュオをお願いしたKO.DO.NA氏も無事到着。そして最後に到着したのが何と、同じくジャミンで共演して私がこのブログで批判した女性サックスプレイヤー、関根さんである。彼女も今回が初とのこと。偶然が重なり、始まる前から波乱含みとなった。

ライブは絶妙な演奏順で進行。
どうやらこの日はいつもの倍くらい人が集まってしまったらしく、時間はトータルで15分以内、曲数は3曲以内とかっちり決められた。終わって見ると出演者の演奏スタイルは大きく2つに分けられて、前半は主に常連さんによるギターの弾き語り(主催の円地さんはインストのジャズギター)で、後半はほぼ初出演のプレイヤーでかためられたのだが、これがまた揃って管楽器(サックス2名、トランペット3名)でフリーインプロの面々。こういう機会がないとそうそう聴く事が無いギターの弾き語り、しかもオープンGマイナーという変則チューニングが飛び出すなど非常に味わい深かったのだが、特に女性の方は Roland TR-606 からドラムパートを出しており、「30年前に買って、これで問題ないからずっと使ってる」と言う。演奏できる機会があれば Fender Telecaster と Roland TR-606 を肩から提げて出向き、演奏して来たのであろう。私のような浮ついた機材マニアとは格が違うのである。
後半、即興演奏組はトランペットの横山氏のソロからだったと思うが、堂々の演奏だった。吹奏楽やスタンダードジャズのような明確な音ではないけれど、横山氏しか出せない確固とした音。続いてのサックスの男性(名前を失念してしまった)は対照的にパキッと輪郭が際立った音。次に私と KO.DO.NA氏 によるトランペット・デュオだったのだが、そもそもトランペット2本で出るのが珍しかろうという目論みが当たってくれた模様。うまいこと色の違いも出せたようで、私としては成功だったのではないかと思っている。最後はサックスの関根嬢。チャーリー=パーカーだっただろうか、スタンダードジャズの面影を残した演奏と、スキャットにカズー、スライドホイッスルといった玩具楽器も総動員して縦横無尽だった。ソロだったのでジャミンの時と違って変にハラハラする事なく楽しめた。やはりどこへ行っても名物である。

今回は写真がない代わりに後ほど録音をアップしたいと思う。スマートフォンの録音アプリで録ったので、モノラルかつ所々音が割れているのはご容赦願いたい。
MySpace>2010-12-20_21-57 with KO.DO.NA
音は同じですがこちらがおすすめ->soundcloud

2010年12月19日日曜日

告知の体を成していない告知

明後日の12/20(月)に高円寺グッドマンで出演予定。

なんでもいっぱいDay
PM7:00 OPEN
PM8:00 - 10:00 or 11:00 END
チャージ 1,300円

トランペット•デュオで出演する予定。

KO.DO.NA
黒木一隆(TP、ピアニカ)と木ノ下友一郎(エレクトロニクス、ギター)によるユニット。クラブDJ、現代音楽を経て、劇団唐組入団。同退団後、劇中音楽作曲やインプロビゼーションを主体とした幾つかのバンドを経て、2002年静寂音響ユニット『KO.DO.NA』を開始。2006年 『 KO.DO.NA :小人の化学』 発売。2010年ルクセンブルグ『soundzfromnowhere』より「riunione dell‘ uccello」発表。その後、幾つかのオムニバスCDへ参加。ラトビア共和国の音楽誌『フラッシュ』にて紹介される。西麻布『Bullets』『スーパーデラックス』等に不定期出演。オーファイな電子機材を用いノイズの中から賛美歌、児童音楽、鎮魂歌を紡ぎだす。 舞台音楽から即興演奏、楽曲演奏まで幅広く活動中。
http://kodona.web.fc2.com/index.html

森下雄介
チャットシステム「IRC」から発生したテクノ専門作曲グループ「ch.1112」を母体に自作曲を発表。徐々に電子音響に興味が移るのと時を同じくしてアルゴリズミック•パフォーマンスグループ「方法マシン」に参加し、既存作品の上演と並行して、電子工作面ではイルミネーションや正否判定システムの開発、「ハノン大演奏会」では「シャルル・ルイ・ハノンの墓」の作曲に関わる。ハノンの練習をするにあたり「出来るだけ生のピアノに触りたい」という思いから千野秀一•新井陽子両氏によるピアノ2台を使った即興演奏ワークショップ「2pf」に参加。ハノンとまったく関係なく現在の「ピアノアピ」に続き、即興演奏への参加を通じて学生時代に演奏していたトランペットを見直し、主に飛び入り可のイベントに顔を出すようになる。

◇◇◇

以上が告知なのだが、困った事に出演のアポが取れていない。
グッドマン名物のフライヤーに担当者の連絡先が書いてあるのだが、結局一度も連絡がとれず、マスターに直接お話を伺って「いつも2〜3枠あいているので当日楽器持って来たら出れると思うよ」とのお言葉に賭けている状態である。

2010年12月12日日曜日

観客

11月27日の事になるが、第24回公園コンサートを鑑賞して来た。
公園コンサートそのものの詳細はリンク先をご覧頂くとして、今回鑑賞したのは「9回の逆進がある列車移動」という作品である。ある規則に従って列車移動を繰り返すというもので、その上演を鑑賞する為には観客である私も出演者といっしょに移動する必要がある。つまり、観客でありながら作品を上演している事にもなり、メンタル面に違いはあれど外見上は出演者との違いがないという、ちょっと不思議なコンサート。
午後2時に上野駅から高崎線に乗車してコンサートが開演。神田聡•齋藤祐平•直嶋岳史の3氏からやや距離を取りつつ鑑賞するのだが、リラックスした雰囲気で電車に揺られる様を見ているのである。逆進する場面では駅で降車して乗り換えるのだが、途中、ホームをまたぐ必要がありながら時間が1分しかないというところがあった。緩急ある展開である。
終演は午後6時少し前。11月の終盤とあって日が落ちて気温も下がり、ずしっとした疲労感の中で完遂した。終わってみて感じたことは、やはり、客席に座ってるだけでは味わえない達成感である。最後の逆進が終わって上野駅のホームに降り、それを以て演奏を終えた神田聡•齋藤祐平•直嶋岳史の3氏に拍手を贈ったのだが、自然とその手に力が籠る。打ち上げが盛り上がったのは言うまでもない。


話は変わって、ジャミンat都立大学でのフリーセッション。
12月5日、私にとって2回目のセッション参加。午後7時の開演で時間に合わせて行くのだが、トリオの3名を除いて、私で3人目くらいである。それから徐々にプレイヤーが増えて来て、夜10時ごろには10名を超えていた。楽器は私がトランペットで、サックス•フルート•ギター•ウッドベース•ピアノ•EWIと多彩で、前回からすっかり名物となった女性プレイヤーは、サックスの他に民族楽器の笛にカズー、それにスキャットなど縦横無尽である。ただ、興に乗って居ても立ってもいられなくなる質の人らしく、椅子を立ったり座ったり、テナーサックスを首にかけたり外したり、心中を察するとこっちも締めつけられる思いがしたが、ついに我慢出来ず勝手に出て行って演奏に加わってしまった。その時はジャズのスタンダード曲の演奏中だったのだが、そこにフリーインプロで割り込みをかけた形になってしまい、私は白けてしまった。私より知識も演奏の力量も上なのに、もったいない……
また、この日はジャズピアニストの鶴巻有希子さんが来て下さった。ピアノを使ったワークショップ「ピアノアピ」が「2pf」だった時の参加者で、その時にピアノ同士で共演させて頂いたことがあるのだが、ワークショップを離れて私がトランペットでご一緒するのは初の事である。鶴巻さんはドラムが大ベテランの藤井信雄氏のピアノトリオでリーダーを務めており、そんな方とのセッションでも私の方はいつも通りのテンパリ気味で精一杯の演奏となった。

2010年11月10日水曜日

即興−追記あり−

トランペットのマウスピースを交換した後の話。
マウスピースを買ったのが11月6日の土曜日で、箱の中身が違っていることに気づいて交換してもらったのが翌日の日曜日。この日は午後1時から即興演奏のワークショップ「ピアノアピ」があるので、遅くても午前11時に部屋を出たかったのだが、前日の夜に食べたカップラーメンの香辛料が体に合わなかったらしく盛大に腹を壊して、最終的に部屋を出たのは午後1時少し前。それからまず楽器店へマウスピースの交換に行き、それから目黒パーシモンホールへと向かったのだが、到着したのは午後3時だった。トータルで4時間のワークショップなのだが、既に半分過ぎている。

即興演奏ワークショップ「ピアノアピ」。
元々はピアニストの千野秀一・新井陽子両氏が立ち上げたピアノ2台によるワークショップ「2pf」である。使用する楽器は会場のピアノ2台のみで、初期のころは内部奏法でも何でもありの様相。一度お披露目のコンサートも開いたのだが、紆余曲折あって名前が変わり、会場も変わってピアノが1台になってしまったのを受けて、今では楽器の持ち込みが可能になったというワークショップである。そういえば「ピアノアピ」という名前、ピアノが2台あっての名前なので、また変えた方が良いような……
このワークショップで長い事続いているのが絵本をネタした即興演奏である。絵本の内容に合わせて音を出すのだが、今回はちょっと変わって紙芝居だった。2つあって、1つは群れからはぐれたクジラの話、もう1つは実写の紙芝居でミツバチの生態を扱ったもの。私はおろしたてのマウスピースでトランペットを鳴らしたのだが、他にも木魚やマラカスやシェイカーなどの打楽器に鍵盤ハーモニカもあり、ピアノだけだった頃と違って多彩な音が添えられた。絵本をネタにした即興演奏以外にも、ピアノの演奏を交代しながら皆思い思いに音を出して楽しんだ。

次はバーでフリーセッション。
午後5時にワークショップが終わると、駅の近くでお茶した後に私ひとりで時間を潰して「Jammin」へ。偶然ワークショップと最寄り駅が同じで即興演奏のハシゴである。以前ここに書いたドラマー須郷さんに教えてもらったフリージャムセッションの日で、参加費を払えば誰でも演奏させてもらえるというもの。ジャズバーなのでフリーと言ってもジャズのフォーマットなのではと警戒しまくりだったのだが、全然そんなことなくフリーインプロだった。ただやはりお客さんは私と同じくトランペットやサックス・ギター・ベース、珍しいのはウインドシンセの AKAI EWI で参加した方もいる。EWI の人に話を聞くと、本当はテナーサックスをやりたいのだが住宅事情がそれを許さず、仕方なく EWI をヘッドホンで聴いて練習しているとのこと。私も尺八を練習する時に肩身を狭くしているのでよくわかる。
それにしてもこちらは壮観。どこの喫茶店でも見かけるような普通の座席で、座ってるのはほとんど全員プレイヤー。テーブルやカウンターにドッカと楽器を置いて名前を呼ばれるのを待ちつつ、演奏中の音に耳を傾ける。この雰囲気、昔テレビで見た西部劇のギャングが集う酒場である。どう見てもアウトロー。最終的にプレイヤーは12名になり、その中で私が知るのはドラムの須郷氏だけで、ほとんど初対面で名前が呼ばれたら前に出て一緒に演奏する。やはり端々にジャズらしさが出る即興演奏なのだが、ソプラノサックスの女性はスキャットを始めたかと思えば絶叫するしで、やはりここでも気は抜けない。それが夜の11時まで続いた。

ほぼ一日中即興演奏してみて。
まず「ピアノアピ」の方。楽器持ち込みが出来るようになって飛躍的に音が多彩になったけど、ピアノだけで何とかしていた以前のワークショップの音が懐かしい。モノクロ写真の風情があったように思う。ただしそれは大人向けで、子供には退屈かもしれない。ピアノだけで子供を退屈させないようにするのは技術が要りそうで難しいところだ。今回、試しに野村誠+片岡祐介「音楽ってどうやるの」を持って行ってみたのだが、失敗したのはこの本の前半「なんちゃって○○」に集中してしまった事。「○○」にはジャンルが入るのだが、わりと楽譜が書かれていて我々でパッとやるのはハードルが高かった。後半のゲームピースであれば出来たように思うし、子供でも楽しめたと思う。それにこれはワークショップに課題として作品を考えて行った頃につながる。漫然と音を鳴らすところから大きく踏み出せる。
次のジャムセッションでは、それぞれ得意とする楽器を持って相応のスキルを身につけた人々が集まった。そして、ジャズのフォーマットがうっすら感じられるのだがほとんどフリーインプロの状態。その中にあって、ドラムが重要な役割にあり、何よりも音が大きくビートを刻めば秩序が生まれる。シンバルの連打があると演奏が終わるのである。本当に即興演奏だと延々と終わらないことが多いが、きちんと終わる。予定調和と言ってしまえばそれまでだけど、大人数が参加するセッションでの進行に欠かせないだろう。「ピアノアピ」は延々と終わらない方のタイプで、このようなジャムセッションのやり方も取り入れてみると面白いかもしれない。でも、次は来年なんだよなあ。

追記
イラストレーターのシャルロット井上さんが「ピアノアピ」の様子をブログにアップして下さいました。こちらは写真も豊富です。
継続はちからなりなの?

Jammin から一枚。

2010年11月8日月曜日

Tp.2

トランペットのマウスピースを購入した話。
先日「余裕があればエリック宮城モデルを買う」という旨を書いたが、結論から言うと日野皓正モデル TH-5 を購入した。経費精算でお金が戻り、そのわずかな利鞘をあてて購入したのだが、そこまでの流れを紹介したい。

徒歩圏で見つけた管楽器専門店。
今住んでいるところの近くに管楽器専門店を見つけたことに始まる。永江楽器というお店で、高円寺の南口から続く商店街から少し離れて住宅街の中にある。外から見たところ小さいけれど感じの良いお店で、Android携帯電話の HT-03A で検索してみると立派なホームページがある。入ってみると女性の店員さんが一心に木管楽器の修理かメンテナンスをしている。そのままショーケースを眺めると、トランペット用のマウスピースは数が少なく、基本的に取り寄せになりそうなことがわかる。ぶらぶらしてたら店員さんが気づいてくれたのでさっそく話をしたところ、いくつか試奏させて頂けたのだが、そのラインナップにこのお店の深さを見た。というのも、試奏したのが Bach MEGATONE 3C・BEST BRASS GROOVY・HAMMOND DESIGN だったのである。メガトーンはともかく、ベストブラスとハモンドとは。しかもハモンドの方は何故か受注生産の型番で、カップがめちゃくちゃ深い物だった。残念ながらどれも予算オーバーなので(楽器本体じゃあるまいしケチるところではないのだが)、メンテナンス小物だけ購入して店を出た。

御茶ノ水で定番のお店。
管楽器に関しては必ず足を運ぶお店なのだが、今回は少しばかり事情が異なるので店名は控えさせて頂く。先日エリック宮城モデルなど試奏させて頂いたところで、今回は最初にエリック宮城モデルの EM-2 と日野皓正モデルの TH-3、次に TH-5 を出してもらった。日野皓正氏と言えば高校時代に持った印象が「男臭くて力任せに頬をふくらませて演奏する人」というもので、今の今まで食わず嫌いしていた。そんな訳で、試奏するにあたって出してもらっておきながら「このロゴは如何なものか」と全然乗り気でない。ところが吹いてみると凄く良いのである。「飛び道具を一本」のつもりでいたのだが、これは常用で使える……そう思って、同モデルで一番内径が大きい TH-5 も試奏して、それに決めた。

帰って来てさっそくブログにと。
昼過ぎに出かけてすっかり日が落ちてから部屋に帰り着いた。買って来たマウスピースと、いつも使っている Bach 3C を並べて携帯電話のカメラで撮影する。刻印をこちらに向けて……そこで気がついた。日野皓正モデルの TH-5 を購入して、箱は確かにその通りなのだが、中身が TH-3 だったのである。ご存じない方が多いと思われるが、管楽器のマウスピースは売り物を箱から出して試奏して、終わった物はアルコール消毒や中性洗剤で洗浄するなどした後、元のように売られるのである。まあ、飲食店の食器にしたって同じことだけど。それで今回、入れ違いになったらしい。実はこの時、「まあいいか」と思った。TH-3 と TH-5 を試奏した時、TH-3 はすぐに鳴ったのだが、TH-5 は鳴らなかったのである。ところがバテてからは TH-5 の方が踏ん張りが利く。迷った末の TH-5 だった。しかし、試奏してちゃんと思うところがあって TH-5 にしたのだし、第一、店に並べられている TH-3 の箱に TH-5 が入れられているはずで、お店が気づいていない可能性がある。翌日、交換してもらいに再度お店に訪れたところ、真摯に対応して下さった。ここに貼る写真は、交換前の TH-3 である。左のへちまみたいな形しているのがそう。

交換してもらったその日、ほぼ一日中即興演奏で使用したのだが、それはまたの機会に。

2010年11月3日水曜日

Tp.

トランペットのマウスピースを見に行った。その話の前に。
社会人になったと同時にほぼ挫折という形でやや遠ざかったトランペット。テクノの自作曲を発表したりパフォーマンスに参加する中で「昔取った杵柄による飛び道具」の位置づけで引っ張り出す程度だったのだが、今年は本気モードである。挫折するきっかけとなったハイトーンが出せるようになるかもしれない糸口を掴んだのだ。学生時代の間続けた7年間、チューニングで鳴らすドの音(実音でB♭)の上のソ(F)がようやく出るくらい。吹奏楽で上のソより高い音が出て来たらフレーズごとオクターブ下げて、それでも1曲もたないという状態だった。それが思いつきでやり直した今年、まだ1年足らずで憧れと屈辱の High B が、まだ不安定とはいえ出せるようになったのである。

その糸口とは。
大きく3つある。1つめは高い音を出すにつれ口の中を狭めること。基本中の基本らしいのだが今の今まで知らず、高校1年生で始めた時に言われた「口の中はあくびをするように」「手の指を縦に並べて3本口に入るように」を如何なる時も実践していた。2つめは息を出す強さ。学生時代は羞恥心が先に立って息の強さが不十分だったのである。1つめで口の中がフルオープンなところへ息が足りないものだから、その分アンブシュアを締めまくる結果となった。1曲もたない訳である。3つめは頬の筋力。そもそも今年掴んだ糸口の最初の要素はこの筋力で、「フルマラソンを完走するのに必要な体力を付ける気でトレーニングしたら高い音が出るんじゃ?」と思ったのである。仕事中もこっそりアンブシュア作って細く速い息を出していた。たまにバジングになって音が出て、屁をこいたみたいで凄く恥ずかしい。

マウスピースについて。
長くメインで使っていたのは Bach 7C。学生時代にYAMAHAのTp.を使っていた時から始まって、社会人になって中古で Bach のトランペットを購入した後もしばらくの間使っていた。今持ってるのは中古で買った時に付いていたもので、調べたら刻印にドットが付いてるヴィンテージ物らしい。吹奏楽から離れて飛び道具として使うようになった時に Bach 10-1/2C を使い始めた。これで少しだけ高い音が出るようになってほぼ満足。それから数年が経過して今年、これでいいのだろうかと疑問に思い楽器店のスタッフに話を聞いて選んだのが Bach 3C。これを選ぶ時にはまず 1-1/2C・3C・5C を試奏し、高音を維持したいことから 3C・3D・3E を試奏するという慎重さで選んだ。私の場合はカップの深さが高音の出しやすさに繋がらなかったのだが、とにかくこの試奏で 10-1/2C を使っていてアタックが当たりにくい気がしていたのが確信に変わり、それ以来 Bach 3C で満足している。

今日の話。
Bach 3C というマウスピースが一番だ!という気持ちで使っているのだが、マウスピースという奴はいくつものメーカーからいくつもの型番が発売されていて、「もっと合うマウスピースがあるのでは」と思わせてしまうのである。特に私の場合はハイトーンに不安があるので、不利な Bach 3C を使ってて良いのかと疑問がつきまとってしまうもの。それで今日はお店で「キャラの濃いマウスピース」を指定して試奏させて頂いた。ボビー=シューモデルのJazz・エリック宮城モデル・Bach Megatone 1C の3本が出されたのだが、メガトーン以外シグネチャモデル。シグネチャモデルを試奏するのなんて初の事である。ボビー=シューJazzモデルは 3C を使い続けてたら良いかなと思った。エリック宮城モデルでは初めて High D が出て楽しかったが、普段の音域がスカスカな感じに。メガトーンは見た目と名前から受けるインパクトがなく、これも 3C  でいいやと思う。そんな訳で今日は購入こそしなかったものの、金銭的に余裕が出来ればエリック宮城モデルを購入するかもしれない。最後に、写真は帰省した時のもの。

2010年11月2日火曜日

雨中

台風にめげずにライブを2本見に行った話。
1本目は、江古田にあるフライングティーポットでの須郷文人氏(Drs.)と若杉大吾氏(Drs.)による即興演奏のライブ。それを知ったのは早稲田の茶箱で定期的に開かれている sokkyo-enso でピックアップしたフライヤーで、まず最初に飛び入り参加が可能という点に目が行った。ライブ当日は平日の夜。演奏に参加させてもらうならトランペットしかないと思って、これは会社に楽器を持ち込むしかないと覚悟を決めた。

そして、当日は台風接近中の雨天。
仕事用のバッグ•トランペットケース•傘、それらを持って通勤ラッシュに参戦するという非常に鬱陶しいことになった。そして、フライングティーポットに着いてみれば、客は私一人。私が演奏に参加してしまえばお客さんゼロである。客より出演者の方が多いライブはこれまでにも何度かあったが、これは初めてだった。しかし、二人の演奏は素晴らしかった!ドラム2人という変則的なセッションだが、熱帯雨林気候の風土を連想させる落ち着いた音で始まって、しばらくは寄せたり引いたりしていたのだが、ポッと火が着いたと思ったら一気に燃え広がる場面もあり、きっちりビートが刻まれてダンサブルな展開もあり、全然飽きなかった。

後半、苦労して持って来たトランペットで参加。
ドラムセットを持って来た2人に比べたら些細な苦労だが、それはともかく演奏も必死になった。途中、スーッと血が足の方へ落ちて行って平衡感覚を失う場面があったのだが、あれは久しぶりに危ない瞬間だった。先に「客がゼロ」と書いたけど、演奏を始めてしまえば客の有無は関係なくなる。演奏に没頭することに変わりがないのだ。自分で録音してなくて客観的に見れていないので何とも言えないけれど、何らかの結果は出した。

2本目の舞台は多摩美の八王子キャンパス。
多摩美の芸祭で、七里圭監督の映画「ホッテントットエプロン–スケッチ」を、音楽が生演奏によって提供される形態で上映するのである。その演奏に i9ed氏が参加するので見に行く事にしたのだが、この日が正に台風が関東に上陸する日だったのである。

懐かしの八王子駅からバスで20分の山の中。
行きがけはまだ風が無く、上映前に屋内の展示をのんびり鑑賞する余裕があった。その時に撮った写真を下に貼るが、天気が良ければさぞかしいい景色だったろうと思う。そろそろ開場かなとホールに向かうと、七里監督をはじめ関係者がぞろぞろと外を歩いている。挨拶もそこそこに会場に向かい、席に着くと少しばかり眠って、上映が始まった。この映画は以前、下北沢の劇場で観た事がある。その時の記憶はぼんやり残っているのだが、今回の半ば即興演奏の劇伴は当然フィルムのサウンドトラックと異なるもので、珍しい試みであることに間違いなく興味深かった。難を挙げると、音楽と効果音の境界があいまいで、目の前で演奏された音なのか、フィルムのサウンドトラックなのか判別できない場面があった。判別する必要はないはずなのだが、どうしても「あ…今のは違うのか」と意識に上ってしまうのである。上映が終わって外で一服してたら、在学生と思われる方々が同じことを話していた。

さて、帰ろう。
上映中にアナウンスで大雨洪水警報が発せられたのが聞こえて来た(どうかと思うが仕方が無い)ので長居は無用。風も強まってのっぴきならない状況になりつつありバス停に急ぐと、既に長蛇の列である。しかし、3路線出ている為に消化が早く、スタッフの誘導もしっかりしていたので混乱はなかった。電車に乗ってる間に雨脚も弱まり、帰り着いてみれば、まあまあ順当なちょっとした旅だった。